2023年が生成AI元年と言われ、はや一年。
AIを動かすために使用される半導体銘柄ですが、その半導体業界において、後工程技術が注目を集めています。
従来は前工程に比べて注目度が低かった後工程ですが、最近では業界の重要な成長ドライバーとして期待が高まっています。
今回は、後工程技術が注目される理由と最新のトレンド、2024年の日本注目銘柄についてご紹介します。
なぜ半導体の後工程が注目されているのか?
半導体の後工程が注目された背景として以下が挙げられます。
- 微細化の限界:従来の前工程での微細化アプローチが物理的・コスト的限界に近づいています。
- 先端パッケージング技術の重要性:チップレットや3次元実装などの新技術が、半導体の性能向上に大きく貢献しています。
- 日本企業の強み:日本企業は後工程関連の材料や装置で高い競争力を持っています。
- 大手企業の注目:TSMC、サムスン、インテルなどが後工程技術開発に注力しています。
- 政府の支援:日本政府も半導体産業支援の一環として後工程技術に注目しています。
半導体の最新トレンド
後工程が注目される半導体ですがどのような面で注目を浴びているのでしょうか?
以下にまとめてみました。
- 先端パッケージング技術の進化:2.5D、3Dハイブリッドボンディングなどの技術が急速に発展しています。
- AI・HPC向け最適化:大規模言語モデル(LLM)などのAI技術に対応するため、高帯域幅メモリ(HBM)の採用が進んでいます。
- シリコンフォトニクス:次世代の高速通信に向けた新技術として注目されています。
半導体の次世代技術
NVIDIAは、次世代のGPUにおいてチップレット技術や3D実装技術を採用しています。
異なるプロセス技術や世代のチップを組み合わせることで、性能向上とコスト削減を両立させているわけですね。
技術と材料の組み合わせにより、NVIDIAのGPUは高い計算能力と効率性を実現し、特にAIやデータセンター向けの用途でその性能を発揮しています。
以下に技術概要とメリットをまとめます。
1. チップレット技術
- チップレットとは、大規模な集積回路を複数の小さなチップに分割し、それらを組み合わせて1つのパッケージに収める技術です。これにより、製造時の歩留まりが向上し、コスト削減が可能になります。
- メリット: 異なるプロセス技術や世代のチップを組み合わせることで、性能向上とコスト削減を両立できる。
2. 3D実装技術
- 3D実装技術は、複数の半導体チップを垂直方向に積層し、相互接続することで高集積化を図る技術です。これにより、デバイス全体の性能を大幅に向上させることができます。
- メリット: 高密度実装が可能で、データ処理能力の大幅な向上と低消費電力化が期待されます。特にAI、自動運転、メタバースなどの分野での利用が見込まれています。
3. 2.5次元実装技術
- 2.5次元実装技術は、インターポーザーと呼ばれる基板上に複数のシリコンダイを横に並べて実装する技術です。これにより、複数のチップを1つのパッケージに集積化します。
- メリット: ワンチップに近い外形寸法を維持しつつ、消費電力を低減し、性能を高めることができます。特に高性能半導体向けに有効です。
4. シリコンブリッジ技術
- シリコンブリッジは、複数のチップレット間を物理的に接続する技術です。これにより、データの転送速度や信頼性が向上します。
- メリット: 高速かつ信頼性の高いデータ転送が可能となり、全体のシステム性能を向上させることができます。
5. エネルギー効率の向上
- エネルギー効率の向上は、次世代半導体技術において不可欠な要素です。特にデータセンターの電力消費が増加する中で、エネルギー効率の高い半導体が求められています。
- メリット: 環境負荷を低減し、持続可能な成長を実現するために重要です。
これらの技術は、半導体の性能向上とコスト削減を両立させるために重要であり、今後の半導体産業の発展に大きく寄与することが期待されています。
生成AIで需要が急増している広帯域メモリですが、製造において必要な最先端の技術は少ないですが、
新しい工程が多くて複雑となっていることから、最後は後工程頼みになっている背景があるようです。
日本の半導体後工程注目銘柄5選
特に後工程で高い技術力と市場シェアを持つ5社を紹介します。
- ディスコ
ディスコは、ウェーハ切断・研磨装置の世界首位企業です。半導体の後工程において、ウェーハをチップに切り分けるダイシング工程で使用される精密切断装置を提供しています。同社の技術は、半導体チップの小型化・高性能化に大きく貢献しています。 - 東京精密
東京精密は、半導体ウェーハやチップの検査・測定装置で高いシェアを持つ企業です。後工程における品質管理や最終検査工程で重要な役割を果たしています。同社の装置は、半導体の信頼性向上に不可欠です。 - イビデン
イビデンは、半導体パッケージ用基板の世界的リーディングカンパニーです。高密度実装技術を活かした先進的なパッケージ基板を提供し、特にAI向け半導体などの高性能チップに対応した製品で強みを発揮しています。 - 新光電気工業
新光電気工業も、イビデンと同様にパッケージ用基板で高い技術力を持つ企業です。特に、セラミックパッケージや各種半導体パッケージの製造で知られており、高信頼性が求められる産業用途や車載用途で強みを持っています。 - レゾナック・ホールディングス
レゾナック・ホールディングス(旧昭和電工)は、半導体の後工程材料で世界首位の企業です。特に、封止材やダイアタッチフィルムなどのパッケージング材料で高いシェアを持っています。同社の材料技術は、半導体の性能向上や信頼性確保に大きく貢献しています。
これらの企業は、TSMCやインテルなどの大手半導体メーカーが日本に後工程の研究開発拠点を設置する動きの中で、さらなる技術革新と市場拡大が期待されています。
日本の半導体産業は、特に後工程において高い競争力を維持しており、これらの企業の技術力が日本の半導体産業の復活に向けた重要な要素となっています。
後工程注目銘柄の業績
銘柄コード | 6146 | 7729 | 4062 | 6967 | 4004 |
銘柄 | ディスコ | 東京精密 | イビデン | 新光電気工業 | レゾナックH |
時価総額(億円) *2024年8月13日時点 | 46550 | 3177 | 6758 | 7729 | 6098 |
配当利回り(実績)(%) | 0.71 | 2.55 | 0.83 | 0.44 | 1.97 |
ROE(%) | 22.39 | 12.88 | 6.89 | 7.21 | -3.44 |
自己資本比率(%) | 72.9 | 69.4 | 43.8 | 67.3 | 27.2 |
売上高・営業収益(百万円) | 307554 | 134680 | 370511 | 209972 | 1288869 |
営業利益(百万円) | 121490 | 25307 | 47568 | 24810 | -3764 |
1株当たり利益(円) | 777.1 | 479.2 | 225.4 | 137.7 | |
営業キャッシュフロー(百万円) | 97524 | 4892 | 145231 | 45464 | 118686 |
投資キャッシュフロー(百万円) | -16403 | -10563 | -77274 | -73273 | -61869 |
財務キャッシュフロー(百万円) | -30938 | 1616 | 67526 | -6886 | -62880 |
現金等(百万円) | 215486 | 36736 | 443583 | 82475 | 189915 |
売上総利益率(%) | 67.8 | 40.7 | 27.7 | 18.5 | 19.1 |
販管費率(%) | 28.3 | 21.9 | 14.8 | 6.7 | 19.4 |
営業利益率(%) | 39.5 | 18.8 | 12.8 | 11.8 | |
経常利益率(%) | 39.8 | 19.6 | 13.8 | 13.0 | |
従業員数(人) | 4886 | 2658 | 11375 | 5553 | 23840 |
1人当り売上高(千円) | 62946 | 50670 | 32572 | 37812 | 54063 |
上記5社の直近決算期(2023年期、2024年期)の各財務諸表のまとめ表になります。
上記5社の中ではディスコが時価総額では秀でていますね。
レゾナックHDは化学系業界なので、一概に比較はできませんが、黒鉛電極の受払差の影響で唯一の赤字となっています。
売上総利益率や営業利益率の面でもディスコが突出しています。
どこが他の4社と比べて良いのでしょうか。
ディスコ | 東京精密 | イビデン | 新光電気工業 | レゾナックH | |
日本以外の売上高比率(%) | 87.8 | 69.3 | 71.7 | 40%以上 | 52.9 |
ディスコの強みは圧倒的な海外売上比率の高さにあります。売り上げの9割に迫る部分が海外向けとなっているようですね。
中でも中国向けが35.9%となっており、アメリカ政府の政策影響をもろに受ける可能性がありますが、高い付加価値をつけて販売ができている状況と考えられます。
後工程銘柄の技術と特徴
上記5社の技術と特徴概要について以下にまとめています。
1. ディスコ
技術と特徴:
- ダイシング技術: ウェーハをチップに切り分けるための精密切断装置を提供。これにより、半導体チップの小型化と高性能化が可能になる。
- 研磨技術: ウェーハの表面を平滑にするための研磨装置も提供しており、これにより高品質なチップ製造が実現される。
2. 東京精密
技術と特徴:
- 計測・検査装置: ウェーハやチップの欠陥や品質を検査する装置を提供。これにより、半導体デバイスの信頼性と性能を確保する。
- 品質管理: 電気的特性や外観構造の検査、長期寿命試験を実施する装置も提供しており、不良品の発生を最小限に抑える。
3. イビデン
技術と特徴:
- 高密度実装技術: 高性能な半導体パッケージ用基板を提供し、特にAI向け半導体などの高性能チップに対応。
- 先進的なパッケージ基板: 3Dパッケージング技術やシリコンブリッジ技術など、次世代のパッケージング技術を開発。
4. 新光電気工業
技術と特徴:
5. レゾナック・ホールディングス
技術と特徴:
- 封止材・ダイアタッチフィルム: 半導体パッケージング材料で高いシェアを持ち、半導体の性能向上と信頼性確保に貢献。
- 材料技術: 高性能な封止材や接着フィルムを提供し、パッケージング工程の効率化と品質向上を実現。
銘柄の強み
上記企業は、半導体の後工程においてそれぞれ独自の技術と強みを持ち、半導体デバイスの性能向上や信頼性確保に大きく貢献しています。
特に、ダイシング技術、計測・検査技術、高密度実装技術、セラミックパッケージ技術、そしてパッケージング材料技術が注目されています。
技術革新により、日本の半導体産業はグローバル市場での競争力を維持していますが、米国や台湾tsmcの実力は途方もなく、今後需要のパイの取り合いが始まっています。
技術力の有無が今後の競争力を左右しますね。
日本の底力を表す半導体銘柄として市場を牽引してもらいたいです。
まとめ
今回は半導体業界について調査してみました。
後工程技術は、半導体産業の新たな成長エンジンとして期待されています。
特にAIやHPC分野での需要増加を背景に、さらなる技術革新と市場拡大が見込まれます。
日本企業にとっても、強みを活かせる分野として大きなチャンスとなるのでこれを逃さないで欲しいですね。
半導体業界は常に変化し続けています。
後工程技術の進化が、今後の半導体産業にどのような影響を与えるのか、引き続き注目していく必要がありそうです。
他業界の動向もこちらからどうぞ。
それではまた。
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