こんにちは。きんかぶるーむです。
近年、冬の大雪もあり、車業界のガソリン車からEV車への変化だけではなく、安全面を左右するタイヤの面でも注目されている方は多いのではないでしょうか。
タイヤメーカーも徐々にEV用タイヤへのシフトを開始しています。
車と必ずワンセットでついてくるタイヤ。
今回はタイヤ業界の状況について調査していきたいと思います。
タイヤ業界のシェア率
タイヤ業界の売上高ベースのシェア率は以下の通りとなっています。
企業名 | 売上高割合(%) |
ミシュラン | 14.8 |
ブリヂストン | 12.5 |
グッドイヤー | 8.4 |
コンチネンタル | 6.8 |
住友ゴム | 4.1 |
ピレリ | 3.6 |
ハンコック | 3.4 |
中策ゴム | 2.6 |
横浜ゴム | 2.2 |
正新 | 1.8 |
トーヨータイヤ | 1.7 |
ジーティータイヤ | 1.6 |
その他 | 36.6 |
Total | 100 |
フランスのミシュランを筆頭に、日本国内勢ではブリヂストンや住友ゴム、アメリカのグッドイヤー、イタリアのピレリ、韓国のハンコックなど、名の知れたメーカーで全体の6割程度を占めています。
またタイヤ市場の規模としては1987年~2021年までで、40,250百万ドルから177,500百万ドルと4倍程度まで大きくなっています。
人口が増え続ける限り、車の数も増え続けると考えられるので、消耗品であるタイヤの市場は今後も拡大を続けていきそうです。
ここでは、国内メーカーの上位4社を取り上げて、事業内容やその業績特徴を比較していきます。
- ブリヂストン
- 住友ゴム
- 横浜ゴム
- TOYO(トーヨータイヤ)
国内タイヤメーカーの事業内容比較
ブリヂストン
言わずと知れた、ブリッジストーン(石橋)ことブリヂストンです。
ブランドとしては、SUV用のARENZA、高付加価値タイヤのREGNO、低燃費タイヤのECOPIAが有名ですね。
スタッドレスタイヤとしては、BLIZZAK(ブリザック)がよく知られています。
事業は大きく以下の3つで構成されています。
- タイヤ事業
- ソリューション事業
- タイヤ/タイヤデータ/モビリティデータを活用し、高付加価値を提供する事業及び新しい価値を提供する事業
- 多角化事業[化工品、スポーツ用品、自転車用品]
中核事業はタイヤ事業ですが、成長ドライバーとしての位置づけであるソリューション事業、スポーツ用品や自転車用品にも携わっています。
タイヤから得られるデータを利用するソリューション事業を手掛けている点が他社との違いと考えられます。
DXへの取り組みを前面に打ち出しており、タイヤ空気圧や温度をビッグデータ解析し、タイヤの摩耗性能や耐久性能の予測、タイヤのサブスクリプションサービスの提供で適切なタイヤ使用について提案を行うなどしています。
サステナビリティの面ではNTTと協力し、デジタルツイン技術を活用して環境に優しい街づくりを推進していく活動が開始されています。
住友ゴム
ダンロップ(DUNLOP)商標でタイヤを販売しています。
ブランドとしては、高付加価値タイヤとしてVEURO(ビューロ)、LE MAN V(ルマンファイブ)、
低燃費タイヤとしてENASAVE(エナセーブ)が有名です。
スタッドレスタイヤとしては、WINTER MAXX(ウィンターマックス)がよく知られています。
2023年10月26日に対外的にアクティブトレッドと呼ばれる技術を搭載したオールシーズンタイヤを2024年秋に発表することが公表されました。
水に触れたり温度が下がったりするとゴムが柔らかくなるような材料を使用して、摩擦性能を増強することでウエット路面でもアイス路面でも高いグリップ力を発揮することが特徴のようです。
新技術の発表は非常にワクワクしますね。
しかし摩擦性が向上するので、タイヤがすり減りやすくなるのが懸念点と考察します。なんとか両立できるレベルにしてほしいものです。
事業は以下の3つで構成されており、スポーツ事業としては、ゴルフの松山英樹選手がSRIXON(スリクソン)を使用していることで有名ですね。
- タイヤ事業
- スポーツ事業
- ゴルフ、テニスなど
- 産業品事業
横浜ゴム
YOKOHAMAの表記でタイヤを販売しています。
最近はCMも多く流し、販売、販促強化しているようですね。
ブランドとしては、高付加価値タイヤとしてADVAN(アドバン)シリーズ、低燃費タイヤとしてBluEarth(ブルーアース)が有名です。
スタッドレスタイヤとしては、ice GUARD(アイスガード)がよく知られています。
事業は以下の2つで構成されています。
- タイヤ事業
- MB事業
- ホース配管、工業資材など
TOYO(トーヨータイヤ)
サッカー日本代表を応援している様子がHPトップ画面から伺えます。
サムライブルーの印象と会社のカラーが合っていそうですね。
ブランドとしては、SUVタイヤとしてOPEN COUNTRY(オープンカントリー)シリーズ、オールシーズンタイヤとしてCELSIUS(セルシアス)が有名です。
スタッドレスタイヤとしては、DELVEX(デルベックス)がよく知られています。
事業は以下の2つで構成されています。
- タイヤ事業
- 自動車部品事業
国内タイヤメーカーの業績比較
2021年度の業績とキャッシュフローは以下の通りです。
銘柄名 | ブリヂストン | 横浜ゴム | 住友ゴム工業 | TOYOTIRE |
銘柄コード | 5108 | 5101 | 5110 | 5105 |
業績実績 |
||||
決算期(月数) | 2021/12/1 | 2021/12/1 | 2021/12/1 | 2021/12/1 |
売上高 | 3,246,057 | 670,809 | 936,039 | 393,647 |
営業利益 | 394,340 | 83,636 | 49,169 | 53,080 |
経常利益 | 377,594 | 85,199 | 44,765 | 55,909 |
当期利益 | 394,037 | 65,500 | 29,470 | 41,350 |
自己資本比率 | 57.50% | 53.30% | 46.20% | 52.70% |
キャッシュフロー (単位 : 百万円) |
||||
決算期(月数) | 2021/12 (12か月) | 2021/12 (12か月) | 2021/12 (12か月) | 2021/12 (12か月) |
営業キャッシュフロー | 281,538 | 68,303 | 63,090 | 34,465 |
投資キャッシュフロー | 131,701 | -4,479 | -54,023 | -37,538 |
財務キャッシュフロー | -379,321 | -55,195 | -13,332 | 11,697 |
現金等 | 787,542 | 42,523 | 75,093 | 53,592 |
売上高としては、ブリヂストンが圧倒的に多く、2位の住友ゴムの3倍強あります。
営業利益率としては、住友ゴムが4社の中では低く5%程度、他の3社は10%を超える水準となっています。
現金、現金同等物としてもブリヂストンが圧倒的に多く、余裕のある経営状況であることがわかります。
銘柄名 | ブリヂストン | 横浜ゴム | 住友ゴム工業 | TOYOTIRE |
銘柄コード | 5108 | 5101 | 5110 | 5105 |
利益率等 (2021年度通期) | ||||
原価率 | 59.40% | 66.70% | 72.30% | 59.10% |
売上総利益率 | 40.60% | 33.30% | 27.70% | 40.90% |
販管費率 | 28.90% | 20.90% | 22.50% | 27.40% |
営業利益率 | 11.60% | 12.50% | 5.30% | 13.50% |
経常利益率 | 11.60% | 12.70% | 4.80% | 14.20% |
当期利益率 | 12.10% | 9.80% | 3.10% | 10.50% |
財務指標 | ||||
流動比率 | 224.00% | 158.20% | 179.70% | 175.00% |
有利子負債比率 | 30.80% | 41.50% | 59.20% | 46.00% |
売上債権回転率 | 4.50 回 | 4.22 回 | 4.69 回 | 4.73 回 |
棚卸資産回転率 | 5.15 回 | 4.39 回 | 4.29 回 | 4.86 回 |
原価率の観点で見ると、営業利益率の低い住友ゴムが最も原価率が高く、材料費や海上輸送費の影響を受けやすい状態であることが推測できます。
有利子負債や固定比率(原価率)も高いため、変動費を借入金で賄っているような印象です。
この一方で、住友ゴムの2022年度の売上高は1兆円を初めて超えそうとの予測が出ていますので、売上の面では知名度を高めそうです。
したがって住友ゴムの今後の戦略としては、営業利益率を高めるために、より高付加価値のタイヤ比率を上げることや、タイヤサイズの選択と販売拠点集中を実施することが挙げられそうです。
また、横浜ゴムについても2022年度は過去最高の売上高となる見込みです。
決算内訳から見えるブリヂストンとTOYOTIREの強み
最後に下の表で海外売上高比率と仕向け先トップの売上額と構成比を示しています。
銘柄名 | ブリヂストン | 横浜ゴム | 住友ゴム工業 | TOYOTIRE |
銘柄コード | 5108 | 5101 | 5110 | 5105 |
海外売上高比率 | 83.40% | 64.60% | 68.00% | 75.90% |
仕向け先トップの 海外売上高 | ||||
決算期(月数) | 2021/12 (12か月) | 2021/12 (12か月) | 2021/12 (12か月) | 2021/12 (12か月) |
セグメント名 | 米国 | 日本 | 日本 | 米国 |
売上高 | 1,518,554 百万円 | 237,686 百万円 | 299,681 百万円 | 204,314 百万円 |
売上構成比 | 46.80% | 35.40% | 32.00% | 51.90% |
ブリヂストンとTOYOTIREは売り上げのほぼ半分を米国関連で上げているのが特徴です。
米国はマーケットとしても非常に大きいので、米国で多くのシェアを獲得できる仕組みを作り上げていることが、この2社の強みといえそうです。
TOYOTIREは2022年から新生産設備が稼働しているセルビア工場を中心に、マレーシア工場でグローバル供給ハブ機能を強化しており、売り先を米国に集中させています。
売り先を特化し利益率を底上げする、選択と集中の一例ですね。
ブリヂストンは以下表の通り、世界の各地に数多くのタイヤ製造工場、原材料工場を有しています。(2022年9月1日時点)
米州 | 欧州、中近東、 アフリカ、ロシア |
中国、アジア、 太平洋 |
日本 | Total | |
新品タイヤ工場 | 15 | 11 | 13 | 10 | 49 |
タイヤ関連工場 | 8 | 2 | 5 | 11 | 26 |
原材料工場 | 5 | 2 | 6 | 2 | 15 |
多角化製品工場 | 6 | 2 | 5 | 11 | 24 |
生産拠点数 | 34 | 17 | 29 | 34 | 114 |
このようにブリヂストンの強みは、世界各地にサプライチェーンを設け、供給面でのリスク分散を図るとともに、地産地消を行い、材料費等の変動費影響を低減させていることが考えられます。
外部影響に強い体質を確立し、多額のキャッシュの確保、高い営業利益率を長年実現できていると推測されます。
ブリヂストンでは中長期成長戦略として、グローバルでの競争力強化に向けて、生産拠点の再編が行われているようです。
- 生産拠点の統合と最適化:
- タイのランシット工場でのタイヤ生産を終了し、他の拠点に生産を集約。
- 生産効率を高め、コストを削減。
- 新興市場へのアクセス強化:
- 新興市場でのプレゼンスを強化し、成熟市場でのポジションを固める。
まとめ
今回はタイヤ業界について調査してみました。
- タイヤ売り上げのトップ15には日本タイヤメーカーが4社(ブリヂストン、住友ゴム、横浜ゴム、TOYO TIRE)
- タイヤ市場は年々増加の傾向にある
- 国内4社の事業内容は、タイヤ事業がメイン。サブでゴム製品事業もある。スポーツ分野でも知名度が高い。
- ブリヂストンは世界各地での生産拠点の確保、TOYOは販売拠点の選択と集中で高利益率を実現
EV用のタイヤがメインとなった際にまた記事の方を更新させていただきます。
タイヤ業界全体の売上は上がっていますが、2022年以降、タイヤ価格値上げのニュースもよく見かけますので、普段から車を使っている人には厳しい状況がしばらく続きそうです。
またタイヤ事業は消耗品であり、環境影響も考慮しなければならない事業と考えられますので、各社のSDGsの取り組みにも今後注目ですね。
他業界の動向もこちらからどうぞ。
それではまた。
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