【防衛増税・H3】三菱重工、川崎重工、IHIなどの特徴や恩恵企業は?

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【防衛増税】三菱重工、川崎重工、IHIなどの特徴や恩恵企業は? 決算分析

こんにちは。きんかぶるーむです。

H3ロケットの第二号機打ち上げが2024年2月に予定されており、世界各国を含め防衛分野・宇宙分野への注目度が高まっています。

2023年には台湾や朝鮮半島のアジア情勢不安定を受けて、日本政府が防衛力整備計画を大きく拡充させ、防衛費増額を打ち出しました。

ウクライナ問題やパレスチナ問題もあり、世界情勢は緊迫感があります。

今後の有事に備えて、自国の防衛力を高めるのは必要な動きであると理解できますね

今回は日本の防衛業界の状況、防衛業界をリードする企業について調査していきたいと思います。

この記事でわかること
  • 防衛業界のシェアと業界規模
  • 国内防衛業界メーカーの事業内容、業績
  • 財務諸表から見える国内防衛メーカーの強み、弱み


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日本の防衛費のシェア率

日本の防衛物品に関しては、他国からの輸入が多い状況でしたが、有事を想定すると今後は国内での供給が必要になってくると予想されます。

防衛省の防衛白書から、日本の防衛予算別の企業の割合がデータとして出ていましたので、シェア率として以下にまとめています。

調達額
シェア
順位
企業名金額
(億円)
年間調達額に
対する割合(%)
主要な防衛装備品
1三菱重工業株式会社365221.2次期戦闘機
護衛艦
2川崎重工業株式会社16929.8潜水艦
スタンド・オフ電子戦機
3日本電気株式会社9445.5宇宙状況把握レーザー測距装置
陸自業務システム基盤借上
4三菱電機株式会社7524.403式中距離地対空誘導弾(改善型)
多機能レーダOPY-2
5富士通株式会社6523.8情報処理サブシステムOYX-1-29
赤外線探知装置 AN/AAS-44-N3
6東芝インフラシステムズ株式会社3632.1電波監視装置3号機C
機上電波測定装置構成品
7株式会社IHI2911.7次期戦闘機
次期戦闘機用エンジンシステム
T-4用エンジン・オーバーホール
8株式会社小松製作所2741.6120mmM、JM1りゅう弾
信管なし
120mmTKG、JM12A1対戦
車りゅう弾
9株式会社日本製鋼所2541.5将来レールガンの研究試作
62口径5インチ砲
10藤倉航装株式会社2491.4F-15緊急射出装置用部品
T-4緊急射出装置用部品
令和4年度 防衛装備品調達実績 企業別トップ10
防衛省 防衛白書 令和4年度調達実績及び令和5年度調達見込 令和4年度上位20社の契約実績より抜粋して作成

日本の防衛の要である三菱重工業を筆頭に、電気通信メーカーなども名を連ねています。

防衛装備品は、戦車やミサイルのようなものが中心だと思っていたのですが、レーザーや監視装置など敵の侵入を検知するような部品も防衛装備品に数えられるようですね。

令和4年度(2022年度)の調達額としては17217億円であり、上記に掲載した10社で53%を占めています。Top5社だけでも44.7%なので、如何に依存度が高いかを示唆していますね。


防衛関連費用の予算としては、関連経費も含めて2027年度に11兆円にも拡大される見込みがあり、2022年度の5.18兆円の約2倍となっていますので、今後も急激な増加が期待できますね。

世界情勢が不安定である限り、防衛市場は今後も拡大を続けていきそうです。

ここでは、国内防衛メーカー上位の中でも以下の5社を取り上げて、事業内容やその業績特徴を比較していきます。

  • 三菱重工業
  • 川崎重工業
  • 三菱電機
  • 日本電気
  • IHI

国内防衛メーカーの事業内容比較

潜水艦 防衛関連

以下に調達額シェア順に、企業の特徴と防衛関連装備品の特徴を紹介していきます。

三菱重工業

船舶・海洋、原動機、機械・鉄構、航空・宇宙関連などを手掛けており、日本の総合重機の最大手に位置付けています。

以下の4つのセグメントで事業展開を行っており、事業の幅が非常に広いです。

  • エナジー
  • 物流・冷熱・ドライブシステム
  • プラント・インフラ
  • 航空・防衛・宇宙

2022年度のセグメント別の売上高中の割合は以下になります。

セグメント売上高中の割合(%)
エナジー41.4
物流・冷熱・ドライブシステム28.6
プラント・インフラ16.1
航空・防衛・宇宙14.7
三菱重工業株式会社HP MHI REPORT 2023より抜粋して作成

現在は火力、原子量発電を中心としたエナジー事業の割合が高い状況ですが、防衛費の増額により、セグメント別最下位の航空・防衛・宇宙セグメントが今後上位に躍り出る可能性もありますね。

防衛関連装備品としては、民間航空機、防衛航空機、飛しょう体、艦艇、特殊車両、特殊機械(魚雷)など、乗り物を中心にカバーしていることが特徴ですね。

川崎重工業

陸・海・空の輸送機器・システムの大手重工業メーカーになります。

主力製品は高速鉄道車両、ボーイング社向け製造品、航空機用エンジン、航空機(輸送機・哨戒機、ヘリコプター)、オートバイであり、こちらは主に乗り物を中心とした構成になっています。

全社売上に占める防衛関連事業の割合は2022年度で14.0%であり、こちらも防衛費の増大に伴って、大きく売上高を伸ばす可能性を秘めていますね。

2022年度の防衛事業の構成としては、以下の比率となっています。

事業別防衛関連売上高中の割合(%)
航空宇宙事業65
船舶海洋事業17
舶用推進事業14
航空エンジン事業5
2022年度 防衛関連売上高の事業別割合 川崎重工株式会社 グループビジョン2030より抜粋して作成

川崎重工業の防衛関連の取り組みとしては、以下が挙げられています。

  • スタンドオフ防衛能力、統合防空ミサイル防衛能力
    • 既存ミサイルから大きく性能向上(射程、残存性等)した誘導弾の開発
  • スタンド・オフ電子戦機
    • 脅威に対し敵の対処可能圏外から効果的な電波妨害を行う
  • 次期新型潜水艦の船型開発検討
    • 日本の潜水艦は全て川崎重工業社製ディーゼル主機を搭載
  • 高出力レーザ兵器
    • ドローン対処用の国産高出力レーザ開発
  • 無人アセット防衛能力
    • 艦船/島嶼への物資輸送
    • 艦載上空からの警戒監視

潜水艦技術に強みがあり、様々な防衛省の関連事業に参画しているようです。

三菱電機

防衛から電子デバイス(パワー半導体)、家庭電器まで幅広い事業内容を展開する大手総合電機メーカーになります。

以下の5つの事業を展開しています。

  • インフラ(社会システム、電力システム、防衛・宇宙システム)
  • インダストリー・モビリティ(FAシステム、自動車機器)
  • ライフ(ビルシステム、空調・家電)
  • ビジネスプラットフォーム(情報システム・サービス)
  • セミコンダクター・デバイス(電子デバイス)

防衛関連は衛星通信装置、人工衛星、レーダー装置、アンテナ、誘導飛しょう体、射撃管制装置、放送機器など通信系に強みがあるようですね。

中核事業であるFAシステムから各種技術が展開されているようです。

日本電気(NEC Corporation)

通信技術に強みをもつICT総合企業になります。

以下の3つの事業で展開しています。

  • ITサービス
  • 社会インフラ(テレコムサービス、エアロスペース・ナショナルセキュリティ)
  • その他(ヘルスケア、ライフサイエンス事業など)

主要製品はパソコン・周辺機器、クラウドシステム、スーパーコンピューター、ネットワーク製品、顔認証ソリューション等です。

防衛関連事業として、エアロスペース・ナショナルセキュリティ事業では、航空宇宙および国家安全保障領域に関わるICTソリューションを提供しており、光通信技術や無線技術、暗号・セキュリティ技術が生かされているようですね。

IHI

旧社名を石川島播磨重工業とする総合重工業メーカーです。

航空機やロケット、原子力発電、プラント基板など手掛けている事業は幅広いです。

原子力関連は原子炉圧力容器・格納容器・配管システム・核燃料サイクル関連システムを開発・建設しており、核融合発電での存在感も大きいですね。

アンモニアや水素を燃料にした発電設備の開発にも注力しており、カーボンニュートラルにも貢献する企業になります。

以下の4つの分野での事業展開を行っています。

  • 資源・エネルギー・環境
  • 社会基盤・海洋
  • 産業システム・汎用機械
  • 航空・宇宙・防衛

航空宇宙関連の民間航空ジェットエンジンはエアバス・ボーイング社に納入実績があり、知名度も高いですね。

2022年度の売上高中の事業別割合は以下の通りです。

セグメント別売上高中の割合(%)
産業システム・汎用機械事業32
資源・エネルギー・環境事業27
航空・宇宙・防衛事業27
社会基盤・海洋事業13
IHI 統合報告書2023より抜粋して作成

航空・宇宙・防衛事業の割合は27%となっており、防衛関連の寄与度は高いですね。

こちらも防衛費の増額で大きく、業績が変動しそうです。

IHIは、日本の航空機用ジェットエンジン生産の60~70%を占めており、民間航空エンジン用ロングシャフトは世界シェア50%を有していることから、航空機分野では技術力高く採用が広がっていることが伺えます。

防衛分野の需要拡大に伴って、航空エンジン事業とロケット事業の強化を掲げており、次期戦闘機用エンジンの開発やロケット増産体制の確立など役割も大きいですね。

国内防衛メーカーの業績比較

防衛関連 戦車 キャタピラ

2023年度の業績とキャッシュフローは以下の通りです。

企業名三菱重工業川崎重工業日本電気三菱電機IHI
銘柄コード70117012670165037013
自己資本比率(%)31.823.440.858.022.2
決算期2023/32023/32023/32023/32023/3
業績実績
(単位 : 百万円)
売上高42027971725609331301850036941352940
経常利益1911267034916767129217964865
当期利益1304515302911450021390844545
営業キャッシュフロー808882361715212716671154116
投資キャッシュフロー-45575-77457-49591-148533-52347
財務キャッシュフロー-1890285305-122786-119568-24043
現金・現金同等物347663138420419462645870124743
原価率(%)81.880.771.171.979.2
売上総利益率(%)18.219.328.928.120.8
販管費率(%)13.614.623.822.914.8
経常利益率(%)4.54.15.15.84.8
当期利益率(%)3.13.13.54.33.3
国内防衛関企業の2023年度業績とキャッシュフロー

売上高としては、三菱電機、三菱重工業の順に多く、5位のIHIの3倍以上の水準になります。

経常利益率としては、三菱電機が最も高く5.8%、時点で日本電気が5.1%ですね。

売上総利益率としても、三菱電機と日本電気は高いので、この差を生んでいるのは、事業として三菱電機と日本電気は総合電機メーカーの側面も持ち合わせており、防衛産業の動向に左右されにくいためだと考えられます。

防衛事業は材料関係を海外からの輸入に頼ることもあり、円安が進めば材料費が高騰し、利益率にも影響が大きく出そうですね。

防衛メインの三菱重工業、川崎重工業、IHIで比較してみると、IHIが経常利益率としては高い一方で、自己資本比率は最も低いですね。

投資キャッシュフローがマイナスであり、他企業と比べて売上高が少ない中で投資規模としては大きいと考えられますので、宇宙事業含め先行投資を積極的に実施している状況と推測できます。

決算内訳から見える防衛費用増額による恩恵企業

最後に下の表で海外売上高比率と仕向け先1位、2位の売上額と構成比を示しています。

企業名三菱重工業川崎重工業日本電気三菱電機IHI
銘柄コード70117012670165037013
決算期2023/32023/32023/32023/32023/3
海外売上高
比率(%)
57.060.427.050.748.8
仕向け先1位
国・地域
日本日本日本日本日本
仕向け先1位
売上高
1808335(百万円)682993(百万円)2417450(百万円)2467030(百万円)692664(百万円)
仕向け先1位
売上構成比(%)
43.039.673.049.351.2
仕向け先2位
国・地域
米国米国アジアアジアアジア
仕向け先2位
売上高
7381774994163837271218903312761
仕向け先2位
売上構成比(%)
17.628.911.624.423.1
国内防衛関企業の仕向け先1-2位と海外売上高

5社揃って日本での売上がトップになっています。

日本電気と三菱電機は総合電機メーカーの側面もあるので、日本での売上が高いと考えられます。

日本の防衛費関連費用増額により、日本での売上比率が高い企業から恩恵を受け始めると想定され、

やはり実績ベースで調達額シェア1位である三菱重工業を筆頭に、防衛関連の事業比率が多い川崎重工業、IHIも規模増加候補となりそうです。

防衛関連費用の予算としては、2027年度に2022年度の約2倍になる見込みですので、単純に考えると2022年度の調達額の2倍規模の売上高増加が見込まれることになります。

業績の売上に対して、三菱重工業、川崎重工業はともに10%程度の規模になるので、成長ドライバーとしては非常に大きいパイになりそうです。

IHIは2022年度の調達額としては少ないですが、今後の受注増加次第では、業績への貢献規模も大きくなりそうですね。

今後のIRやニュースに期待したいです。

防衛技術から宇宙分野への期待

H3ロケット打ち上げ前 JAXA youtubeチャンネル 打ち上げLIVE配信より
H3ロケット打ち上げ前 JAXA youtubeチャンネル 打ち上げLIVE配信より

JAXAが従来からのロケット「H2」に代わる新型主力ロケット「H3」の打ち上げを計画しており、

2023年3月の初号機打ち上げは失敗(中断)に終わってしまいましたが、2024年2月17日に2回目のロケット打ち上げが日本の種子島宇宙センターにて行われ、見事に成功を収めました!

打ち上げ事業としては三菱重工業を中心に、関連企業として、IHIやNEC、川崎重工業、日本航空電子工業、三菱スペースソフトウェアなどが開発に携わっていました。

コストが従来機の1/2程度に下がることが見込まれるなど、今回の打ち上げ成功は今後の宇宙産業の発展に大きく寄与するものと想定されます。

コストが下がると、参入できる企業も増加すると考えられ、衛星の打ち上げや物品の移送などで貢献が期待できます。

まさに今回は日本の各メーカーの技術力の結晶といえそうです。

関連企業の今後の動きには注目ですね。

H3ロケット打ち上げ後 JAXA youtubeチャンネル 打ち上げLIVE配信より
H3ロケット打ち上げ後 JAXA youtubeチャンネル 打ち上げLIVE配信より

まとめ

今回は防衛業界について調査してみました。

  • 日本の防衛費に占める調達額は、トップ5社で約45%を占めており、今後の受注増加が見込まれる
  • 防衛費用は今後増加が見込まれる
  • 防衛企業各社の強みは、別事業で蓄積された技術とノウハウによる。防衛装備品のすみ分けはある程度できているのでパイの取り合いにはならなさそう。
  • IHIは積極投資で規模拡大中

防衛事業は各国との技術競争もあるので、今後の各社の投資動向や防衛省・政府にも注目が必要ですね。

それではまた。

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