こんにちは。きんかぶるーむです。
2023年4月のIPO案件で、月面開発関連会社が4/12(水)に東証グロース市場に上場しました。
【企業名】ispace(ispace, inc.)(証券コード:9348)
初値:1000円
公募価格:254円
発行株式数が多く、上場前の評価はイマイチだったようですが、初値は大きく上昇しました。
期間(180日)でロックアップが設定されているので、上場後しばらくは需給が引き締まっていそうです。
2023年4月は他にも多数銘柄がIPOで上場を果たしています。
☆他の銘柄分析はこちらのIPOリストからご確認ください。
早速どのような企業なのか調査し、ispaceの特徴を確認していきます。
総合評価
総合評価:4.67/5点
- 成長性:4点
- 売上高は着実に増加
- 独自事業性:5点
- 宇宙事業は専門性高く、競合少ない
- 初値期待値:5点
- 公募価格+293.7%
*このブログではIPO銘柄を成長性、独自事業性、初値期待値の3つの観点から評価し、総合評価としています。
*あくまで管理人の独自基準ですので参考程度でご覧ください。
ispaceの会社概要
会社沿革
年月 | 概要 |
2010年1月 | 代表取締役CEOの袴田武史が東北大学吉田和哉教授とともに日本からGoogle Lunar XPRIZE参加の検討を開始 |
2010年9月 | 合同会社ホワイトレーベルスペース・ジャパン(現ispace社)を埼玉県入間市に設立 |
2011年8月 | Google Lunar XPRIZE向けの月面探査車(ローバー)のプロトタイプを発表 |
2013年5月 | 合同会社を株式会社に組織変更し、社名を株式会社ispaceに変更 |
2013年7月 | Google Lunar XPRIZEに日本唯一の参加チーム「HAKUTO」として始動 |
2015年1月 | 「HAKUTO」で開発するローバーが宇宙空間でも機能する性能を持つことが評価され、Google Lunar XPRIZEの中間賞を受賞 |
2015年1月 | 米国デラウェア州にispace technologies, inc.を設立し、株式会社ispaceを子会社化する組織変更を実施 |
2016年4月 | 月面開発事業への本格進出に向け、月着陸船(ランダー)の開発に着手 |
2016年10月 | インキュベイトファンド株式会社及び株式会社日ノ樹よりコンバーティブル・エクイティで2億円を調達 |
2016年10月 | 日本での事業化加速のため、米国本社ispace technologies, inc.を解散の上、株式会社ispaceを本社に変更 |
2017年3月 | ルクセンブルク大公国政府と月の資源開発に関する覚書を締結し、子会社ispace EUROPE S.A.(連結子会社)を設立 |
2017年12月 | 月着陸船(ランダー)開発のために101.5億円の資金調達(シリーズA)を実施 |
2018年2月 | シリーズAの追加ラウンドとして2億円(累計103.5億円)の資金調達を実施 |
2018年3月 | Google Lunar XPRIZEの終了に伴い、HAKUTOプログラムを終了 |
2018年9月 | 月面探査の技術検証ミッション「HAKUTO-R」プログラムの立上げ及びSpace ExplorationTechnologies Corp.(SpaceX)のファルコン9ロケットで相乗りでの打上げを公表 |
2018年11月 | NASAによる月面輸送サービスの商業的購買プログラムであるCommercial Lunar Payload Serviceに米国The Charles Stark Draper Laboratory, Inc.のチームとして選定 |
2019年5月 | European Space Agency(ESA)との間で、月資源利用の実証に向けたミッション「In-Situ Resource Utilization」(ISRU)の事前検討に係る契約を締結 |
2019年7月 | 子会社のメンバーが、ESAの月の水探査を目指すプロジェクト(PROSPECT)のサイエンスチームに選出 |
2020年7月 | 月着陸船(ランダ―)開発のために追加で30億円の資金調達(シリーズB)を実施 |
2020年12月 | ispace technologies U.S., inc.のオフィスをカリフォルニア州からコロラド州デンバーへ移転 |
2020年12月 | ミッション・コントロール・センター(月着陸船及び月面探査車を地球から操縦するための管制室)を東京都中央区日本橋に開設 |
2020年12月 | NASAによる月面で採取した月のレゴリス(砂)の販売に関する商取引プログラムに、ispaceとispace EUROPE S.A.が採択される |
2020年12月 | シリーズBの追加ラウンドとして5億円(累計35億円)の資金調達を実施 |
2021年5月 | 国内大手銀行4行から、総額19.5億円の借入を実行 |
2021年7月 | 東京都中央区に株式会社ispace Japanを設立 |
2021年7月 | 月着陸船開発のために追加で53.1億円の資金調達(シリーズC)を実施 |
2021年10月 | シリーズCの追加ラウンドとして2.5億円(累計55.6億円)の資金調達を実施 |
2021年12月 | 子会社ispace EUROPE S.A.がESAの月面輸送サービスパイロットプログラムにAriane groupと共同採択される |
2022年7月 | ispace technologies U.S., inc.がチャールズ・スターク・ドレイパー研究所(ドレイパー研究所)を中心とするチームの一員としてNASAの商業的物資輸送プログラム(Commercial Lunar Payload Services、CLPS)のタスクオーダーCP-12のサービスプロバイダーに採択される |
2022年7月 | 金融機関各行より総額50億円の借入を実行 |
2022年12月 | 民間月面探査プログラムミッション1の打上げをフロリダ州ケープカナベラル宇宙基地より実施 |
ispaceは民間による月面探査車(ローバー)開発及び、世界初の民間月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」への参加を目指し、2010年9月に設立されています。
GLXPは、Googleがスポンサーとなり、Xプライズ財団が2007年に開始した、世界初の民間による月面探査についての賞金レースのことで、優勝賞金はなんと2000万ドルが設定されていたそうです。
2013年7月に「Google Lunar XPRIZE」に日本唯一のチーム「HAKUTO」として独自に参加を果たしています。
多額の借入を実施できていることから、宇宙産業への関心はどの企業からも高く、評価されているようですね。
ispaceの事業内容
ispaceは「Expand our planet. Expand our future.」をビジョンに掲げ、月面探査、開発の事業化に向けて取り組んでいる企業になります。
自社開発を行っているランダー及びローバーを用いた以下3つのビジネスモデルがあります。
- ペイロードサービス
- 顧客の荷物(ペイロード)をランダーやローバーに搭載し、月まで輸送するサービス
- データサービス
- 将来的にデータサービスを主要サービスの1つとして提供予定。月に関する観測データのデータベース化、サブスクリプションモデルでの提供見込み。
- パートナーシップサービス
- グループの活動について、コンテンツとして利用する権利や広告媒体上でのロゴマークの露出、データ利用権等をパッケージとして販売し、技術開発や事業開発で協業を行うパートナーシップ・プログラムの提供
ランダーはSpaceX社のファルコン9ロケットにより打ち上げられ、ロケットから放出された後、月遷移軌道と呼ばれる軌道へ入り、約4ヵ月の期間をかけて月の周回軌道へと入った後に月面着陸をします。
着陸後はローバー等の一部の稼働ペイロードはランダーから放出され、また一部のペイロードはランダー内部に搭載されたまま、月面での観測活動等を行い、データ収集等を行います。
月面データ観測器や打ち上げについて、いろんな企業が絡んでいそうですね。
いずれにしても安定してロケットを打ち上げる技術があってこそ、実現できるビジネスモデルです。
SpaceX社頼みになるのかもしれませんが、宇宙ビジネスという新たな可能性が実現に近づいていますね。
ispaceの業績推移
ispaceの上場前の期、及び上場後に発表された2023年3月期についての業績推移は以下になります。
2018年3月期から2022年3月期の業績推移
上場前の5期にあたる業績推移は以下の通りです。
売上高は2020年に落ち込んでいるものの右肩上がりで伸びていますが、利益面は投資先行による借入金やプロジェクト費用の計上等が大きく響き、赤字が続いています。
宇宙技術面の開発には継続して巨額の金銭が必要なため、現状は仕方がない面が大きいですね。
ispaceの2023年3月期決算
ispaceの2023年3月期の決算業績は以下になります。
2023年3月期は前期比対比で売上高は46.7%増加、売上総利益は65.2%の増加となっています。
ミッション1の打ち上げ費用等を一括計上したことで販売管理費の増大が発生し、巨額営業損失が出ています。
ispaceでは「HAKUTO-R」プログラムという、初の月面着陸であるミッション1(2022年)及び、月面探査ミッション2(2024年予定)からなるプロジェクトを推進しています。
ミッション1の途中経過として、10個のマイルストーンを設定しており、そのうち8個までを達成しています。
ミッション1として、UAE政府宇宙機関の月面探査ローバー輸送、日本特殊陶業の固体電池輸送、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の変形型月面ロボット輸送が計画されているようですね。
月面着陸完了まではいけなかったようですが、月面に至るまでの観測データについて他企業からの引き合いもあるようです。
宇宙ビジネスの夢を感じますね。
ispaceのビジネス上の基本コンセプトとして、月に存在するとされる水資源を活用し、宇宙における「燃料補給中継基地」として月の可能性を探ることが挙げられています。
月が地球重力の1/6であることから、地球から運ぶモノを出し、月を中継地点として利用すれば、他の惑星探査時のコストを大幅に軽減できるとの考えになります。
地球から宇宙に出るにはまだまだ課題がたくさんありますが、月の他にも人類が活動できる拠点探索にもつながりそうですね。
【JAXA H3ロケット打ち上げ進捗】
JAXAが従来からのロケット「H2」に代わる新型主力ロケット「H3」の打ち上げを計画しており、
2023年3月の初号機打ち上げは失敗(中断)に終わってしまいましたが、2024年2月17日に2回目のロケット打ち上げが日本の種子島宇宙センターにて行われ、見事に成功を収めました!
コスト面でのメリットが非常に大きいので、宇宙産業への期待も高まりますね。
ispaceの業績にも影響してきそうです。
IPOでの調達資金の使途
IPOでの調達資金の使途としては、主にランダー開発や打上代金の支払い等の運転資金に充当する予定とのことです。
研究開発費の一環として利用されるようですね。資金調達には増資等も考えられますが、宇宙ビジネスには巨額の資金が必要になるため、今後も様々な資金調達方法を実施していくものと想定されます。
【2024年3月13日発表】
海外募集による新株式発行(増資)について
開発資金の確保とミッション3遂行、投資家層の拡大のため、増資が発表されました。(1株871円、10,250,000 株)
今後の宇宙ビジネスの拡大可能性、銘柄の希少性を思うと、必要な資金調達なのかもしれませんが、既存株主からすると痛いですね。
バイオ銘柄などと同様のリスクが存在すると考えられます。
まとめ
今回はIPO銘柄ispaceについて調査してみました。
- 月面開発ビジネスで展開
- 現状の赤字続きで芳しくない
- 地球圏外に安定していける技術開発が最も重要
宇宙開発の魅力、規模の大きさから人気化するのではないかと感じています。
トヨタやブリヂストンなど名だたる大企業も探査車両開発やタイヤなどの面で技術開発を行っていることから、注目度は高いです。
宇宙・衛星関連でのIPO銘柄は以下が挙げられますね。
関連の動きを含めて注目です。
☆他にも多数のIPO銘柄の分析を実施していますのでこちらから確認ください。
☆IPOのオススメ証券口座についてはこちらで紹介していますので、ご覧ください。
それではまた。
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